わらわら図鑑第二回[1998年7月28日]
正直先生presents 現代わらわら図鑑
the world of warawara
わらわらとは……数え切れないほど多くの物・人が狭い空間の中で蠢いている様

 最近の正直先生はどうも何事もうまくいってない。開発中のプレイステーションのゲームは退院後まとめようと仕事していたのだが上手くいかなくて更迭された。こんな事初めてである。サッカー全日本代表元監督加茂周さんの気分である。おまけに、ずっと頑張ってやってきた「ねぎ」もパソコン不況のあおりを受けて、次に出せるめどが立たない。地道に真面目に正直にやっているんだがな。ま、今年はガンにもなっちゃったし、すこし休めということかもしれないな、なんて思う。正直先生とて、いつもなんでもうまくがんがん何かをやっているわけでもないのである。
  そんなブルーなさなかに参議院選というものがあった。ゴメスで政治の話もなんだが、今回だけはしようと思う。 先生は今回はどうしようかな行こうかな、と迷っていたのだが、近くの薬膳カレー屋にまで「選挙に行こう」と貼り紙がしてあったので、なんとなく行く気分になってきた。で、行った。投票したその時は、なんとなくいい気分になっていた。が、結果をみながらいやになってきた。自民党がダメになって民主党が台頭したといっても、新進党が少し議席増やしたといっても、結局全部ミニ自民党なわけじゃない。
 
で、考えたのだ。日本って、日本国民って結局体質的に自民党になりつつあるんだ、と。保守的というか、自分で先に何かをやらないというか、多数のほうになびくというか。こんなに長い間、自民党というものが日本の政治を動かしていると、日本国民も少なからず自民党的になっているかもしれないなあ、なんて思ったのである。それはそれでいいところもあるだろう。だけど、正直先生は「たくさんの人がそう言っているから、それで正しいのだ」っていうのはどうしてもいやなのだ。正しい事はたくさんあると思うのだ。自民党的な「正しい事」で日本人の心を支配されてたまるか! って思うんだな。
  よく投票しない人、ゴメス読者くらいの年齢の人の意見で「政治に何も期待できないから」とか「何も変わらないと思うから」っていう人がいるけど、それこそ「変わらない事がいいこと」っていう思想に冒されちゃっているような気がする。そういう人は自分自身の事もきっと変えれない。個性までなくしていく。それでいいのか? って正直先生は思うなあ。
  で、その参議院選のちょっと前に、自民党的なわらわらを見ちゃったのである。

1)アイトレックわらわら


  正直先生は7月前半、ウインドウズワールドエキスポというものに行った。言わずと知れた、windows関連のパソコン見本市である。正直先生が使っているのはMacである。ま、そんなことはどーでもいいんだが。 で、そこで見かけて気持ち悪くなっちゃったのがこの「アイトレックわらわら」である。見よ、この異様な光景を。オタクっぽい人がかけているのはアイトレックというメガネ型のモニターである。知らない人がわらわらと雛壇みたいに座って同じ映像を見ているわけだ。 何で気持ち悪いんだろうなあ、と考えていたのだが、あ、と思った。個性がないのだ。人間の顔を特徴ずけるものとして「目」ってものすごく重要なのだが、それを隠しちゃっていることでただの「人」みたいな感じになっちゃっているのだ。
  そしてもうひとつ、みんながみんな同じ方向を向いていること。隣の人と話しもせずに。なんか思想統制されて隣の人と意見をかわすこともない未来社会みたいな感じがしてきたなあ。あー怖い。日本社会もこんな感じ? しかし、こういう人をエスコートしているのはバチバチの白いボディコンねえちゃんで、それに惹かれてこの疑似管理社会雛壇に参加した人も少なからずいたと思う。管理社会にもボディコンは必要なのか、オレはボディコンにはだまされないぞ、と変なところで気張ってみた。

2)エンジンわらわら


 そして最近採取したわらわらがこれだ。伊豆の修善寺にレーシングパレスというレーシングカーの博物館があるのだが、そこで意味もなく(ほんとは意味あるんだろうけど)どどどと置いてあったのがレーシングエンジン。思いがけず出会ったエンジンわらわらであった。 正直先生はこれを見てすごく安心した。みんなは車のエンジンとかバイクのエンジンとか見たことがあまりないかもしれないけど、裸で見ると綺麗な金属のオブジェのように感じられるのだ。そしてレーシングエンジンともなると設計者のエゴ剥きだしな感じで、すごくひとつひとつに個性が感じられるのだ。 だからここにはエンジンがワラワラあるんだけれども、決して同じ方向を向いてはいないのだ。それぞれのやり方でそれぞれの信念で、最高の性能を目指している。エンジンそれぞれは(エンジンに人格があるとして)とっても尊敬しあえる関係になると思う。 アイトレックわらわらの人たちはお互いを尊敬しあえるだろうか? そんな事を考えてしまった正直先生であった。

Copyright 1999 Koide, Hirokazu
コイデヒロカズ