屋上毎日第十回[1996年12月3日]
デジタル・ヒーリング・エッセイ
屋上毎日
第十回 
巣鴨病院の巻


 正直先生は現在入院中である。といっても長期入院というわけではなくて、短期の検査入院だ。大腸ファイバー(お尻から管いれるやつ)やって、ポリープ取った。しかしポリープとったらちょっと出血が多くて、腸の内壁にクリップをして血を止めた。クリップつけてる腸ってちょっといいかな、って思う。  
  先生が入院している巣鴨病院は全体的に「ぼよよん」とした小さな病院で、大病院であるような事務的な感じなんか全然ないアットホームな感じなのだ。  
  しかしそうとはいえ病院っていつ入院しても退屈なところである。ま、病気を直すためなんだからしょうがないんだが、とにかく「安静」にしてなきゃいけない。この「安静」っていうのがくせ者だ。寝てるのにもあきるし、本読むにもあきる。そうすると、どうでもいいことをぐだぐだ考え始める。泣きたい気分になる。夜眠れなくなる。疲れておきる。心の中は全然「安静」じゃないんだなあ。大体正直先生はベッドが苦手で良く眠れないのだあ。


 そんな時、仕方がないんで病院の中をくるくる見て回る。先生が入院している巣鴨病院でいっつも面白いなあ、と思うのは「すべり台」の存在だ。


最初これを見たときびっくりした。僕みたいに退屈なやつが少しでも気晴らしできるように「すべり台」を設置してあるのかと思った。なかなかいいじゃないか。砂場とかブランコもあるのかなあ。  
 しかし、「すべり台」は遊び道具なんかじゃないのだ。それは「非常階段」かわりなのだ。外から見るとよーくわかる。


つまり足腰とか弱いおじいさんとかおばあさんとかが脱出しやすいように「すべり台」にしてあるわけだよな。ううむ、でもこのすべり台をおじいちゃんとかおばあちゃんが滑っている光景はなかなかほほえましいものがあるなあ。  
  そんな巣鴨病院に屋上はある。


 これじゃーお家の物干し場みたいだあ! 付添婦さんがいたころ(今は完全看護だからいない)はこの物干し場の場所取り(というか干し場取り)で大変だった。でも今は人影もあまりなく、先生は大部屋の空気から抜け出したくなって、ここでぼーとしたりする。なんかこんな「ぼよよん」とした病院でよかったなあ。  
  でも早く退院しようっと。

Copyright 1999 Koide, Hirokazu
コイデヒロカズ