日本の闇はやわらかい。それゆえ日本人は闇に親しみ、
闇で培われた五感で独自の文化を創り出してきた。
闇を駆逐し、光をあふれさせることこそが文明だという
前世紀的価値観は、もうだいぶ怪しいものになってきている。
今、失われた闇を復興し、もう一度闇に親しんで暮らすことは、
古き良き時代に帰ることではなく、まったく新しい時代へ行くことだ。
「闇学」入門
中野純 著
集英社新書どこまでも暗い!
新書判208頁
定価(本体720円+税)
2014年1月17日発行
ISBN978-4-08-720723-1装幀 原研哉
■もくじ■はじめに 8
第一章 闇の現代史 光に鈍感になった日本人 11
● 光の国、日本
● 日本人の目は光に鈍感?
● Bー29が焼き払った日本の闇
● 日本の夜は世界一白い
● 蛍光灯は障子のようにやわらかい
● 異次元の光、蛍光灯の衝撃
● 暮れない暮らし、闇不足の時代
● 失われた妖怪との共生
● 闇が足りないと光も足りない
● テレビ浴の時代
● 閉めきった室内に日が昇る
● 総エコ化の中で第二章 闇を遊ぶ 闇を使った賢い生きかた 49
● 闇に休み、闇に遊んだ電気以前の暮らし
● 花虫風月、夜の虫を愛でる文化
● 蛍狩りや虫聴きは闇を楽しむもの
● 闇を聴く蛙聴き
● 世にも珍しいナイトハイク・クラブ
● ナイトハイクは日本の伝統
● 深夜の月の出を拝む山登り
● 賢治もナイトハイカーだった
● 今も遺るナイトハイクの伝統
● 意外に多い現代の夜歩き行事
● 伝統的ナイトハイクはどこから来たのか
● いっぺん死んで生まれ変わる
● 昼の闇歩き、布橋大灌頂と戒壇巡り
● 日本は暗闇アトラクションだらけ
● ド闇レジャーだった百物語第三章 夜目と夜覚の世界 五感は闇の中で磨かれる 93
● ただ暗いだけで五感が敏感に
● 夜目とはなにか
● 夜の視力は全体視力
● 武術の基本は闇討ちか
● 夜のほうが昼より見える
● 夜耳、夜鼻、夜舌と夜肌
● 夜道は足の裏で見る
● 松井の素振りを闇で聴くミスター
● 第六感、法力、無我の境地と透明人間
● 闇の中、人に見られていない安心感
● 闇を駈け、闇に沈む
● 夜覚のための伝統的闇ファッション
● 闇具としての杖と鈴
● 闇と徹夜が生む超常現象
● 通夜、徹夜は最高のレジャー
● 闇とセックス、もうひとつの無我の境地
● 鈍感にする知恵
● ちゃんと夢から醒めるが夢は育つ第四章 日本の闇はやわらかい 日本文化は闇の文化 137
● 江戸時代の灯りと闇
● 暗順応を前提とした照明
● 灯台の下は意外に明るい
● 豊かな反射光文化
● 西洋の闇はキツく、日本の闇はやわらかい
● 和紙が光と闇をやわらかくする
● 肌にもやわらかい五月闇
● 月夜にも提灯
● 暗いと遅い、明るいと速い
● 発光都市のもらい灯
● 明るいと集中できない
● 昼間も闇の中で暮らした
● 美術は暗がりで見るもの
● 闇のフレームから光を見る装置
● 暗いトイレがセンスを育む
● 薄明視の夕国、月本
● 『陰翳礼讃』よりも深い闇から第五章 明るい未来から、美しく暗い未来へ 173
● 祭りの光は闇を意識させるためにある
● 広重が描いた両国花火の暗さ
● 鎖国の闇と戦争の闇
● 灯火管制再び
● 街灯を一晩中点けっぱなすわけ
● 暗くなった街の闇度を測ろう
● 引き算の照明でなく
● 新しい不定時法と新しい闇
● 太平洋は世界一豊かな闇をたたえている
● 光と闇を使い分ける
● センサー式ライトで光と闇の共存をおわりに 201
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