最大最強の女神、奪衣婆(ダツエヴァ)とその仲間たち
田舎の閻魔堂の物陰に潜む、世にも恐ろしい海賊ばあさんとの出会いから、すべてが始まった。
地獄のファーストレディ奪衣婆と、その仲間たちの謎を巡る!お寺の境内の端や門の外、墓地の前、川のほとりなどにひっそりと立つ小さなお堂を見つけたら、そっと覗いてみよう。そこはもしかたら、地獄かもしれない。(中略)
ものすごく恐いけれどどこかのんきで、不思議に極楽な日本の地獄。名もなき過去の人たちが生み出してきたこの闇のワンダーランドにもう一度親しみ直せば、この世を生きることがもっとおもしろくなると思う。日本の地獄の豊かな世界を受け継ぎながら、私たち今日の庶民も、ダークファンタジーをさらに紡いでいこう(これを冥界補完計画という)。地獄の謎を楽しみながら、奪衣婆や閻魔さまの正体をつくっていこう。
身近な冥界へ、ようこそ! 地獄は私たちのためにある。
(本書「はじめに」より)庶民に愛された地獄信仰の謎
小野小町は奪衣婆になったのか
中野純 著
講談社+α新書なったと思う!
新書200頁
定価(本体838円+税)
2010年10月20日発行
ISBN978-4-06-272664-1デザイン 鈴木成一デザイン室
■もくじ■はじめに 3
第一章 奪衣婆、君がいるだけで 13
●閻魔さまより奪衣婆!●地獄のファーストレディを呼び捨て●死ぬ前にこれだけは知っておきたい「むかえびと」の基礎知識●垂れ乳は女の勲章●地獄の覗きかた●なぜナマ足垂直立て膝なのか●中国人の中にひとりだけ日本人●奪衣婆の台座はなぜ岩っぽいのか●これを押さえれば君も奪衣婆に!●その者、青き衣をまといて……●玉眼はどこへ行ったのか●葬式仏教万歳!第二章 地獄のちょい役列伝 39
●その前に、主役のこと●懸衣翁の謎●地獄の真の主役、鬼卒と牛頭馬頭●イシュタルを全裸にした門番たちと十王●肩の上のチクリ神●僧頭婆身、王頭婆身●消えた衣領樹の謎●これだけはそろえておきたい地獄の備品第三章 街角の地獄、二丁目の秘密 59
●東京一の巨大地獄●二丁目盆地と新宿のハッテン●東京一、日本一の微小地獄●奪衣婆はなぜ真綿をかぶるのか●蒙古斑は奪衣婆につねられた痕●街角の地獄の現在形、大阪の全興寺第四章 地獄の老舗と小野小町 73
●ハイグレードなあの世の密集地、鎌倉●一日三回の恐るべき大どんでん返し●日本の地獄発祥の地、京都●地獄の巨人、小野篁●冥界に響く鐘の音を聴く●立ち現れる、あの世の都●司命・司録から奪衣婆へ●奈良は極楽●奪衣婆は小野小町だったのか●無常とは、強烈で激しいもの●いい意味で幽霊●小野小町は奪衣婆の娘だ説●奪衣婆美女説と川口の生髪奪衣婆●あの世の女神になったイザナミ第五章 リアル三途の川をガチ渡り 105
●地獄目線の鍾乳洞めぐり●地の底までバス停が終わらない!●地下を流れる三途の川●生死の境を地理的にさ迷う●恐るべき歩道橋の罠とリアル衣領樹●世界の三途の川●生と死の境は広大だった●賽の河原は何川の河原なのか第六章 独立地獄と閻魔の末裔 123
●初山十王堂への至福の地獄散歩●閻魔さまは鈴木さんだった、絶対の絶対に●さわやかな死者だらけの話●日本三大鬼来迎の夢●村の地獄第七章 すばらしき地獄の景観 139
●首都に一番近い火山地獄、箱根●行けども行けども地獄がある●卵男、箱根の底力を噛み締める●もっとリピートしてみた●天国のような那須の地獄●湯船にも共存する地獄と極楽●今そこにある地獄●別府地獄巡り、奪衣バスガイドの夢●地獄が極楽に寄り添う●あの世とこの世の共存●血湧き肉躍る地獄こそ生きる力の根本●女たちのミッドナイトハイク●闇と光の境に座る最大最強の女神第八章 エンマの休日 169
●エンマが街にやってくる●開かずの釜の蓋とそばエバ疑惑●地獄絵の中のホセ●江戸三閻魔の静かな休日●意外にのんきな地獄絵●地獄の雑談●閻魔さまになにをお願いするのか●奪衣婆は実は天女で、そうとう若い(妄)●地獄という妄想遺産の継承おわりに 192
初出・おもな参考文献 194
この本に出てくる寺院などの所在地 196
Copyright 2010 Sarusuberi, Inc.
有限会社さるすべり( 中野純 + 大井夏代 )